欧州議会選挙の前後にソーシャルメディア上で注目すべき5つのこと
5月23日の欧州議会選挙に関連する27のTwitterハッシュタグ(下記参照)のいずれか、またはすべてをフォローして、開票の準備期間中にソーシャルメディアがどのように使用されているか調べて見てださい。実は、それほど大量のツイートの流れを観察することはできません。
「しかし、それはTwitter上の活動がすべて合法的に行われているという意味ではありません。」と、エフセキュア人工知能研究拠点(AI CoE)の研究員であるAndy Patel(アンディ・パテル)(英語)は指摘しています。
AndyによるとTwitterで「トランプ」のようなポピュラーな言葉では、1秒あたり約40件のツイートを確認できますが、選挙前に5月23日の選挙に関連したツイートは、1秒あたり1件しか確認することができませんでした。
「偽情報キャンペーンを実施している側としては、目立ったり、あからさまに虚報だと分かるようにはしたくないはずです。したがって、ターゲットを絞り、ごく自然な活動レベルに見せようとするでしょう。限定的な活動でも、時間の経過とともに何十万ものツイートが生成されるはずです。しかし、大量のデータを念入りに調べる作業は時間がかかるため大事なことが見逃されやすくなります。」とAndyは述べています。
「コンテンツの一部が不自然に誇張されているように感じた場合、見つけやすい偽情報の兆候を探してみましょう。たとえば、韓国のユーザがブレグジットについてのコンテンツをリツイートのしていたり、そもそもツイートに関わるはずはないと思われるアカウントから「いいね」の数と同じかそれ以上のリツイートがあるケースなどです。」
ブレグジット討論におけるTwitterでの共謀と操作
Andyは、ソーシャルメディアを悪用し偽情報を拡散する(英語)方法を調査するために、2年前から選挙や政治的な討論に関連するツイートを監視してきました。
最近、ブレグジットの会話に関連した165万人を超えるユーザからの2400万ツイートを追跡した彼の研究は、「「EU脱退」側を強大にするための極右勢力同士の世界的な活動」があったことを指摘したことで、一躍国際的なニュースになりました(英語)。
その取り組みは、昨年の12月11日にAndyのデータで最初に観察されました。ハッシュタグ#franceprotestsに、注目を集めるブレグジット討論に焦点を当てた一部のアカウントが突然盛り上がりを見せたのです。最も活発なアカウント間のやりとりをマッピングすることによって、彼はブレグジットの賛否の両方で不審な振舞いを見つけましたが、「離脱」側の方がはるかに際立っていました。
欧州議会選挙は直接的にブレグジットを問うものではありません。しかし、特に英国での結果は、おそらくEUを脱退するための投票に関する終わりのない議論に少なからず影響を与える(英語)でしょう。ここ数週間、Andyが離脱賛成派の強力な拡大キャンペーン(英語)が続いているのを観察しているのは、このためだと思われます。
ソーシャルメディアは選挙運動の「西部開拓時代」
選挙の開票が近づくと確かな情報が得られなくなる空白の時間帯があるので、ジャーナリストや観測筋は状況を理解しようとしてTwitterに情報を求めます。それには多くの理由があります。
2016年に実施された英国と米国の選挙では、ソーシャルメディアの偽情報が主役を演じていました。そして、伝統的なメディアチャネルでの選挙広告は厳しい規制に直面していますが、ソーシャルメディアは未だに「西部開拓時代」です。大規模な取り組み(または大規模に見える取り組み)でも、コストは低く抑えられ、問われる責任も軽いのです。
ソーシャルメディアの今後を占う意味で、Andyが提示した心に留め置くべき5つの洞察を以下に紹介します。
1. Facebookが活動の拠点になると予想される
「率直に言うと、実際の選挙キャンペーンはFacebook上で実行されるでしょう。」とAndyは述べています。実際のところ、最近確認されたほとんどの偽情報キャンペーン(英語)は、この世界最大のソーシャルネットワークを標的にしています。
これには、FacebookがTwitterの約7倍のアクティブユーザを世界中に抱えている(英語)という基本的な事実など、いくつかの理由があります。
2016年の選挙に関係の有る無しに関わらず、毎週のようにニュースの見出しを賑わせているプライバシー問題により、Facebookに対する政府の調査は厳しさを増しています。それに対応するように、Facebookは新たに広告に透明性を追加する機能を導入しました。これにより、ユーザは自分が見ている広告の背後に誰がいるのか、より明確な情報を得ることができます。また、Facebookは虚偽の記事が急速に拡散するのを防ぐことを目的とした新しい事実確認機能(英語)も導入しています。
2. かつて有効だった活動が未だに行われている
2016年には、ソーシャルメディアを使って政敵をさらし者にしたり嫌がらせをする、いわゆる「ミーム戦争(英語)」や、戦略的トローリング(荒らしの行為)または「既存のマスメディアの破壊」を目指す「カルチャージャミング(英語)」など意外性のある戦術が政府や活動家により実行されました。
今また、かつて有効だった多くの戦術が実行されています。これらの戦術に最も注力している人々の中には、それらを模倣しようとする右翼の活動家がいます。
Erin Gallagher(エリン・ギャラガー)のコメントによると、ドイツの右翼AfD党は、2016年の「#MemeWar」を追跡しており(英語)、おそらく彼ら自身がその戦術を流用しようと考えているに違いないとのことです。2018年の議会選挙では、AfD党はその歴史の中で最高の選挙結果を勝ち取っています(英語)。
3. いわゆるボットに要注意
Andyはブレグジットの研究を引用しながら、こう述べています「私は”ボット”という言葉を使ったことは一度もありません。」
彼は、Twitterのあらゆる種類の悪用を「ボット」という一言で片づける傾向が強すぎると感じています。ユーザが複数のアカウントで絶え間なくツイートすることを可能にする自動化機能が存在し、実際に利用されているのは間違いありません。しかし、「ボット」や「ボット」の大規模ネットワークさえも多数あるということにこだわり過ぎて、Twitterがその種のサイトの悪用に対して断固たる措置を取っているということは見過ごされています。
「私が良く目にするのは、政治活動に巨額の資金を投じていると思われる活動家の動きです。」とAndyは述べています。
これらのユーザは、自分と同じ支持者を見分けるためにさまざまな戦術を駆使し、彼らのアカウントを構築するためにハッシュタグと「フォローチェーン」を使用します。
しかし、彼らのほとんどは、アカウントが一時的または永久に凍結されるような使い方をしてTwitterを悪用しているようです。Andyは、さまざまなヒントを共有しているユーザと同じように、Twitterの使用禁止からのがれるヒントが共有されているとコメントしています。そして、一時凍結されたユーザがサイトに復帰したとき、彼らのコミュニティは、できるだけ多くのフォロワーを取り戻し「レベルアップ」するのを全面的に支援しています。
これらのアカウントは、たとえばトランプ大統領への支持をヘッダー画像で表現するなどして、同じ嗜好を共有する傾向があります。また、他のインフルエンサーと連絡を取る目的で、ユーザ名やハッシュタグでいっぱいのメッセージでツイートする傾向があります。
本物の「ボット」ならば、Twitterにすぐ見破られることでしょう。
Twitterには、通常の投稿頻度を超えたユーザを厳しく取り締まる機能が備わっているようです。たとえば、最近、あるTwitterの従業員は、マザーボードメディアに対し(英語)、ISISのメンバーを即座に凍結するのに役立つTwitterの機械学習機能は、白人至上主義者を守るために使用しているわけではないと語っています。なぜでしょうか?それは、これが一部の共和党の政治家をアメリカ合衆国から締め出すことにつながるのを恐れているからです。
4. ロシア人だけではない
最近、ニューヨークタイムズ紙(英語)は、ソーシャルメディアで偽情報を拡散しているのはロシアだけではないと指摘しました。その記事では、先進民主主義国による分析で「ロシアや極右グループにつながりがあるWebサイトおよびソーシャルメディアアカウントの一団が虚偽の情報を流布させている」ことが判明したと報告しています。
しかし、ソーシャルメディアを使ったすべての妨害行為を「ロシア」によるものと決めつける風潮は、もっと大切な点を見過ごすことにつながります。
「IRAは、すでに世に出回っている手法を使っていました。」とAndyは述べています。「そして、おそらく彼らは今でも同じやり方をしています。国家によるソーシャルメディアでの偽情報流布行為を、極右グループのような他の組織と区別することは非常に困難です。彼らはただ互いを煽っているのです。」
Twitterでさえも知らないので、私たちにはどのような活動がロシアからのものであるかは見当がつきません。
Andyは、ユーザが「24時間365日、数千のTwitterアカウントを同時に実行できる」TweetsAttacksProのようなツールがあることを指摘しています。このツールには、「アカウントがTwitterに疑われないようにする」機能や、ユーザの現在地を非表示にしたり変更したりする機能が含まれています。
5. Twitterは真実ではない
Twitterを利用しているのは人口の5%未満であることを考慮すると、その会話を生み出す能力は際立っています。
2015年の調査では、「Twitter上で最も活発に情報を確認している最大のグループ(英語)」はジャーナリストであることが分かっています。また、世界で最大の権力を持つ人物が、最近では1日に何十ものツイートやリツイートを投稿するTwitterのパワーユーザでもあることも、このプラットフォームに大きな注目が集まる理由となっています。
しかし、それはTwitterが真実だという意味ではありません。
「英国の最近の地方統一選挙を見てください。」とAndyは指摘します。
Twitterの議論の中心は右翼でしたが、選挙では自由民主党が驚くべき成功を収めています。
「Twitterは、ますます極右勢力のアカウントで満たされたバブル状態になりつつあるようです。」とAndyは述べています。
したがって、Twitterを見るときは、偏向したガラスを通して見ていることを忘れないでください。
詳細については、欧州議会選挙に関連して共有されているLisa-Maria Neudhert(リサ・マリア・ノイザート)氏の「ジャンクニュース」(英語)、およびLuca Hammer(ルカ・ハンマー)氏がTwitterスレッドで継続して(英語)欧州議会選挙関連のソーシャルメディア活動を追跡している内容を確認してください。
欧州議会選関連のハッシュタグ:
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