機械学習をスマートに活用し離反顧客を防ぐ
機械学習によって多くのことを改善することができます。しかし、人工知能を扱える人なら誰もが知っているように、モデルの優劣はそれを訓練するために使用するデータ次第です。
エフセキュアでは、機械学習をサイバーセキュリティの領域に適用するだけでなく、当社や当社のパートナーのサービスプロバイダーがサービスを提供するお客様との関係を改善するためにも活用しています。
顧客離反について学んだこと
既存顧客との関係維持は新規顧客の獲得よりも圧倒的にコストを抑えながら売上を伸ばすことができます。ホワイトハウス消費者問題局によると、「既存顧客を維持するよりも、新規顧客を獲得する方が6~7倍のコストがかかる。」とのことです。そのため、多くの企業が予測モデルの構築に投資をしています。予測モデルでは、解約しようとしている顧客と解約理由を特定し、引き留めるための適切なリテンション戦略を策定し、サービスや顧客満足度の向上に努めています。 このモデルでは、企業の離反後の対応ではなく、離反前の行動を支援につながっています。
エフセキュアでは、この数年間、機械学習を活用した顧客離反予測モデルの構築に取り組んできました。データセットはプロジェクトごとに異なり、顧客のさまざまな視点を考慮しています。これにより、モデルのパフォーマンスも大きく異なってきます。 この分野の多くの関係者が理解しているように、機械学習アルゴリズムをトレーニングするためのデータが極めて重要になりますが、残念なことに企業が保有しているデータは、離反する顧客を予測するには不十分な場合があります。
フィンランドの人工知能を活用したコンサルタント企業のMax Pagel(マックス・ページル)氏は次のように説明しています。「モデルが何かを予測するのに失敗した理由は、それを訓練するために使われた情報が予測力を欠いていたからです。いくら高度なあるいは複雑なアルゴリズムを使ったところで、最適なデータがなければ役に立ちません。」
この記事では、正確な顧客離反予測モデルの構築を検討している方々のために、収集すべきデータポイントについて見ていきます。
顧客離反モデルのトレーニング方法
当然のことながら、顧客離反の意味を定義することが最初のステップです。顧客離反とは、エンドユーザーが製品をアンインストールしたり、支払いを停止したり、サブスクリプションをキャンセルしたり、更新しなかったりすることなどでしょうか? その定義を明確にしたら、次のステップは、ユーザーが誰で、製品や企業とどのように関わっているかを把握するデータの収集です。 モデルは現実を抽象化したものなので、データはエンドユーザー/顧客の現実を反映していなければなりません。
私たちの経験上、必要なデータを見極める最善の方法は、消費者のプライバシーを尊重しつつ、現実を可能な限り反映することです。 消費者に、どのようなデータが収集されるかを認識してもらうと同時に、収集されることへの同意を得る必要があります。
以上のことを念頭に置いて、以下の6つの質問をすることで現実を捉えることができます。
顧客とは一体誰なのか?
この質問に答えることで、顧客の年齢、性別、居住地、職業、収入、教育などの情報が得ることができます。 多くの企業がすでにこの情報を持っているかもしれませんが、ほとんどがセグメンテーションに使用されています。この種の情報は、顧客離れを予測するだけでなく、サービスやエンゲージメントのパーソナライズを可能にし、顧客維持にも役立ちます。
顧客が所有している製品は何か?
顧客ごとに、どの製品を持っているかを知る必要があります。それは、無料で入手したものか、プロモーションで入手したものか、定価で入手したものか、スタンドアロン製品か、他の製品とのバンドルか、購入したライセンス数は、どのプラットフォームで購入したか、どのチャネルから購入したか、支払いは年間または毎月か、価格はいくらか、などを知る必要があります。
顧客は製品をどのように使用しているか?
この質問の答えを得ることは非常に重要です。顧客は価値を認めた企業や製品を支持し続けます。回答には、顧客の行動の概要が示されます。たとえば、ログインの頻度、セッション当たりの製品の使用時間、アクセスする機能、発生するエラーの種類と頻度などです。デジタル製品の場合、このタイプのデータ収集機能はプロダクトに実装できるため、簡単に収集することができます。
顧客とのエンゲージメントは?
この質問は前の質問に似ているかもしれませんが、少し違ったものを捉えます。オンラインまたはオフラインにおける企業と顧客のエンゲージメントを把握します。多くの場合、エンゲージメントの高い顧客ほど、ロイヤルティも高くなります。これには、顧客へ送信したEメールやニュースレター、主催したイベントなどの情報が含まれます。
顧客は製品と提供企業についてどのように考えているのか?
この質問では、顧客が製品やユーザ体験についてどのように感じているかを把握するためのデータが得られます。たとえば、評価、フィードバック、ソーシャルメディアへの投稿、カスタマーケアとのやりとりなどです。顧客の否定的な感情や意見は離反の大きなサインになります。ただし、すべての顧客がこの情報を提供するわけではありません。
顧客に影響を与える他の外的要因は何か?
私たちが手に負えない理由で顧客が去っていくこともあります。たとえば、多くの顧客が新型コロナウイルスの影響を受けており、サービスをいくつも解約しています。また、市場における新しい競合他社、ネットワークのカバー範囲など、顧客を遠ざける可能性のある他の外部要因もあります。このタイプの情報の取得は困難ですが、可能であれば予測モデルにとって価値のある情報になります。
データとユーザのプライバシーを尊重する
上記の6つの質問は、維持または離脱する顧客を特定し、最も重要となるその理由を理解するのに役立つ膨大な情報を提供します。
データサイエンティストは、データを収集したら、その情報のすべてまたは一部を使用してフィーチャーエンジニアリングを実行し、顧客がやり取りする機能の数が増えたか、ログインの頻度が減ったかなど、顧客離反モデリングに有益と思われる経時的な傾向やパターンを把握します。この情報から分かることは、顧客はサービスによって自分のニーズが満たされていることを、継続するうえで最大の理由として考える傾向があるということです。
この情報を取得して記録するには、企業はデータ戦略を策定し、長期/短期的な保管を可能にするデータアーキテクチャに投資して、過去および現在の分析を実行できるようにする必要があります。当然のことながら、プライバシー問題は、データ収集やこれらのデータポイントをすべて関連付ける能力を妨げることになります。しかし、でき得る限りにおいて、顧客と同じ量のデータを意識的かつ積極的に収集することに心を砕けば、現実をほぼ正確に反映したモデルを得ることができます。
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