確証バイアス
ショーン・サリバン
「確証バイアス」とは、Googleで調べてみると「新たに知った事実を、自分の信念や持論の裏付けとなるように解釈しがちな傾向」ということのようだ。
名詞: 確証バイアス
科学技術というものは、潜在的に広範囲な証拠の領域を切り開いてくれる可能性を持っているが、慎重な分析がなければ、確証バイアスを助長するものとなる危険性も秘めている。
先週の金曜日、「Journal News」が、放火罪で起訴されたオハイオ州ミドルタウン市の男性の事件で、起訴理由の1つとして、男性の人工心臓のデータが挙げられていることを報じた。
警察によると、被告人のコンプトン氏の供述には、火災現場の証拠と「矛盾する」点がいくつか見られるという。
コンプトン氏は、永久型ポンプを用いた人工心臓の移植患者であり、多くの医学的な問題を抱えているが、供述によれば、火の手が上がるのを見て、いくつかの大事な物をスーツケースとバッグに詰め込んだという。そして寝室の窓ガラスを杖で割り、バッグとスーツケースを外に放り投げ、その後、それらを車のところまで運んだと供述している。
人工心臓の移植患者? 記録データを取り出せ!
そのため、警察は捜索令状を取り、コンプトン氏の心臓ペースメーカーに記録されているすべての電子データを収集したという。これはJournal Newsが入手した裁判記録による。
コンプトン氏のペースメーカーからのデータには、火災発生前後の心拍数、ペーサーデマンド、心臓リズムが記録されている。
しかし、データの解析を依頼したのは、専門家一人だけである。
データの鑑定に当たった心臓専門医が「コンプトン氏の病状からすると、供述にあるような短い時間の間に、数多くの品々をかき集めてバッグに詰め込み、寝室の窓から逃げ出して、重くて大きなたくさんの荷物を家の外まで運ぶことができたとはとうてい考えづらい。」と断定したと、裁判記録に記述がある。
専門家が1人しかいない状況では、確証バイアスが生まれる危険性が高い。
放火の捜査では、残念ながら科学的根拠の乏しい推理や仮説頼みになってしまっている面は否めないと言えよう。
テキサス州で起きたある事件では、検察官の推理が向けられた先は、五芒星(星形)だった。
ジョン・ジャクソン検察官: 子供部屋の床に五芒星の形に油を撒いたと、トッド・ウィリングハム氏はジョニー・ウェブ氏(証言者)に打ち明けている。
ナレーション: 五芒星。検察官にとって五芒星は悪魔崇拝の象徴であった。そして検察官は、ウィリングハム氏の部屋にあったポスターを証拠として提出する。
ジョン・ジャクソン検察官: ポスターは鉄の棒が人の頭を突き抜けている絵が描かれたものだった。悪魔崇拝主義のイメージを連想させるものだ。
だがそれは、アイアン・メイデンのポスターに過ぎなかった。
ナレーション: ギルバート氏(文通相手のライター)は、そうしたポスターが部屋にあった理由は、トッドが10代の頃からヘヴィメタルが好きだったからだと説明した。それらのポスターは、ロックバンドのレッドツェッペリンやアイアン・メイデンのポスターだったのだ。
シェリー・クーリー(友人): アイアン・メイデンのポスターなら、私たちだって家に貼っていたわ。別れた夫なんか、もう40歳だけど今でもポスターを貼っているんじゃないかしら。元夫もトッドも、アイアン・メイデンのファンだったということでしょう。それが何だというの?
そんなことは、何の証拠にもならない。
実際、人工心臓/ペースメーカーのデータは、警察の見立てを裏付けるものとなるかもしれないし、ならないのかもしれない。時が経たなければ分からないことだ。
では、いま分かることは何だろうか。
今回の事件で分かったのは、自分のデータが自分に不利になるような形で利用されかねない恐怖が煽り立てられることが予想できる、ということだろう。心拍数を記録してくれるフィットネストラッカーやスマートウォッチを、多くの人が身に着けている今日この頃、どうすればそのような事態を回避できるのだろうか。
しかし、恐れるべきはデータではなく、データを「解釈」する人間の方なのだ。
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